第16話

ただそれでも、種族が違う。



人など我々から見れば食料でしかなく、そして頭の悪い下等生物だ。




和子の傷も、人間がつけた。そして更に腹立たしいのは、和子の体内に、人間の雄の匂いがしていることだ。



和子は純潔だ。匂いで分かる。しかし傷だらけの和子を見ていると、和子はあの村の人間ではない、もしくは、無理矢理贄にされたのだろう。



「……ん、」


「気が付いたか。」



うっすらと、和子の瞼が開く。その目は宙を移ろい、そして俺を見て止まる。



少しずつ見開かれていく目は、驚愕を色濃くさせていく。



「か、ろ、」


「なんだ。」



名を呼ばれたのはいつぶりか。ずいぶん昔のことだと笑みが漏れた。



「どうして、」



その続きは、和子の口から出てくることはない。どうせ言うつもりもないだろうと、口を開いた。



「お前、あの村の女ではないな?」



和子が頷く。



「うむ。やはりそうか。ではこれは、」


「っっ、」



下半身で鼻を引くつかせれば、和子の顔が一気に赤くなった。



「っつ、」



同時に、和子の手の平が俺の頭に当たる。



「乱暴だな。」


「そんなとこ、匂うからっ、」



雷知の癒しのおかげか、和子はもう動けるようにはなっているようだった。

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