第13話
「カシラ。」
もう少しで、桜土の角が折れたと言うのに、興を削ぐ不快な声が耳に障る。
「……なんだ。」
踏みつけられる桜土、恐怖で声も出ない羽水。しかしこいつは、この場の雰囲気を物ともしない。
「どうでもいいんですけど、カシラの贄、このままじゃ死にますよ?」
ここで俺の妖力に当てられても笑ってられるのは、俺と同じく二本角の雷知だ。
雷知が指さす先、吊るしている女を見れば、頭から湧き出続ける血は足元の床に血だまりを作っていた。
「……勿体ない。」
あれほど美味な血を、無駄にした。
「まぁ、それをすくって飲むわけにもいかないですからねぇ。」
ヘラヘラと笑う雷知は、何を考えているのか分からない奴だ。しかしこんな奴だからこそ、俺を火炉と恐れずに付きまとえる。
邪険にしたとて、殺しかけたとして、実際に殺そうとしたとしてもこいつは、俺の隣でヘラヘラ笑うことをやめない。
いつしか諦めたこの関係。いつの間にかこいつが隣にいることが当たり前となっていた。
「人間の女の子は、弱くて強い生き物だ。」
「……なんだそれは。矛盾しているぞ。」
贄を腕に抱けば、先ほどより体温が下がっていた。
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