第4話

「っっ、」





体に激痛が走った。固い祭壇の上に、遠慮なく身体が叩きつけられてしまったからだ。



ここは、血で汚れた場所。寒さを感じながら空を見上げれば、自分の周りを囲う人々の表情が見えた。




「娘さん。残念だわ。」


私に同情するおばあさん。



「なんで、こんなことに。」


嘆くおじさん。



「早くっ、あいつらが来るぞ!」


そして、焦る男性。



その誰もが。



「助け、て。」



私の言葉を聞いて、一斉に目を逸らした。




悟ってしまった。




「時間だ!」


「行くぞ!あいつらが来る!」




怯えた人々がどんどん視界から居なくなっていく。それは、私の死が近付いていることを意味していた。




騒がしかった周りの音はなくなっていって、鳴り響く鐘の音だけが耳を刺激する。




穏やかなオレンジ色。これはきっとたいまつ。



私が乗せられている祭壇の上は冷たい石でできていて、その上に寝る人間を労わったりはしない。



乱暴に叩きつけられた体は痛み、頭を打ったせいか意識は朦朧としていた。




それでも、なぜか。




「たすけ、て。」




鐘の音色だけが、私にはとても心地よく感じて。遠のく意識の中、ただそれを聞いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る