第56話

根本はそんなつまんねー理由があったと思う。



だけど。




「でもさ、他の可愛い子を見ても、河合みたいに思うことはなかったんだ。」



それこそ白金もそうだし、この学校には可愛い子なんて多くはなくても他にもいる。ほとんどが彼氏持ちという理由もあるだろうけど、その中で俺は、河合しか意識してなかった。




「でも正直、恋愛に踏み込むほど、一歩が出なかった。」




恋愛って凄いエネルギーを使うと思うんだよな。俺は自分の持つ少ないエネルギーを、付き合える確率の低い河合との恋愛に使う勇気なんてなかった。




「知ってる?俺さ、ネトゲオタクなの。」




河合は何も言わず、小さく頷いた。そりゃそうだよな。あの2人といりゃ嫌でも分かるか。



「正直、ゲームばかりしてきみをないがしろにするかもしれない。それにそもそも、きみを好きかどうかもまだ曖昧なんだ。河合の告白は俺にとってあまりにも現実離れしすぎていて、現実味がないっていうのが本音。」




こんなに可愛い子が俺を好きでいてくれること自体ものすごい嬉しいことだ。だからこそ俺はきちんと向き合いたいし、そうすべきだと思う。




俺を見る河合は無表情で何を考えてるか分からない。だけどその大きな目は俺をまっすぐ見つめているのだけはずっと変わらないことだった。

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