第54話
「別に。」
「え?」
「別に、いいんじゃない?」
「そ、そう?」
「ああ。」
とりあえず行くかと親指で示せば、恥ずかしそうに笑った河合が一緒に歩きだした。
なんだか浮わついた雰囲気。全然落ち着かない。心臓も痛いくらいドキドキしてるし、なにより河合から漂ってくる匂いが悪い。
なにつけたらこんなにいい匂いになるんだ?
ちょっと色々困る、誘惑の香りだ。
一緒に帰ると言っても、俺も河合も、全然話さないもんだから、もうちょっと離れて歩けば別々に帰ってるように見えそうだ。
まぁ、合コンですらなにも話せなかった俺が、さらに意識してる河合と緊張してる状態でべらべらしゃべるなんて無理な話で。このまま最寄り駅までなにも話さないなんてことがあれば、やっぱり違った、なんて言われてフラれてしまいそうだ。
でも、話題をこれでもかというほど考えてはみても、まったく浮かばず。
そりゃそうだろうな。流行とかそういうのを無視して普段ひたすらEGGをやってる俺が気の聞いた話題なんてくり出せるわけがない。
MAMEに聞いときゃよかったと今さら後悔。
「あの、ね。」
「ん?」
ようやくホッとしたのは、学校近くの駅に着いてから。河合に話しかけられてからだった。
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