第52話

結局、あまりにもしつこい滝川をなんとかふりきって、三菱がいないのをいいことに河合を呼び出す方法をたっぷり考えた。



結論から言えば、なにも浮かばなかったわけだけど。



俺と河合の接点なんてほぼない。当たり前だと思うけど、それはそれでなかなか寂しいものがあった。



格差恋愛というけど、俺と河合の場合それに当たる気がする。




結局、なにも手だてがないまま放課後を迎えて、ゲームの発売日だからとダッシュで帰った滝川に置いていかれた俺は寂しく1人で下校中。



「関口くん。」



校門を出かかったところで誰かに呼び止められた。



「……河合。」



その声の主は恥ずかしそうにはにかんでまっすぐに俺を見ているけど、周りの生徒たちの視線を一気に集めていた。



「あのね。別に、用事ということのほどじゃないんだけど。」


「うん?」




返事を聞きに来たのかと思えば、そうじゃないらしい。何度もなにかを言おうとして口を閉じるさまはめちゃくちゃ可愛くて、彼女から伝わる緊張感は突っ込みを入れたくなるほどだ。



いやいや、きみが緊張してるのって、俺だよ?なんて。




俺ごときに緊張してて言いたいこともさらっと言えないいじらしさが、酷く俺の心を動かした。



俺に、恋してるんだよな、この子。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る