第29話

「飲んでるかー?」




何を思ったのか堂本さんが女たちから離れて、俺の隣に座った。すかさず彼女たちもそれに続こうとしたけど、堂本さんが抜けた場所に滝川兄が収まった。



それを逃さないとばかりに滝川も彼女たちの進路をふさぎ、俺と堂本さん、滝川兄弟と女4人という、謎の状況になった。




どうやら堂本さん、彼女たちがあまりにもグイグイくるもんだからやる気を失ったらしい。と言ってもあの人にそもそもやる気があったかどうかは分からないけど。




堂本さんは話せば面白いし、なぜかやたら色気のある人だった。俺を飽きさせることなく話しかけてくれて、飲み物がなければさりげなくおかわりを注文してくれる。



そして時折見せる笑顔はやたら魅力的で、まるで自分が女になって堂本さんのターゲットにでもなった気分だった。




女性陣はというと、こちらに来たい感じはしたが、滝川兄弟の壁を突破するのは難しく。




9時を回る頃には、滝川兄がその内の一人と姿を消していた。




「夏生。番号交換しね?」



支払いを済ませて店の前で、堂本さんは最高の笑顔で俺にそう言った。呆然とスマホを出した俺からスマホを取ってなにやらいじった後、俺の胸ポケットにそれを返した堂本さんは、耳元で。

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