第28話

ゆったりと立つと、ややめまいがした。のどの奥から湧き上がる吐き気は、昨日の余韻だろう。




昨日、滝川的に言えば惨敗だったらしい。だから朝からあんなに機嫌が悪かったんだろう。



結果的には昨日の合コンをおう歌したのは滝川兄だ。堂本さんは次元が違いすぎて、そういうくくりにはしたくない。




昨日、待ち合わせ場所の個室居酒屋に行ったら大学生の女4人が俺たちを待っていた。



滝川兄が気合いを入れていた通り、ブスなんて一人もいなくて、俺が更に緊張したのは言うまでもない。




「遅ーい。」



誰か一人がそう言ったと思う。その途端、4人全員に堂本さんが囲まれた。



堂本さんが女4人に引っ張られる形で俺たちは居酒屋に入った。その時点で滝川兄弟は苦々しい顔で堂本さんの背中を見ていたのを覚えている。




個室はソファー席のなかなかムードのある部屋で、高2の俺と滝川がここでくつろぐには、少々経験値が足りなかった。




はじめの1時間は、堂本さんを囲む女を前に滝川兄弟が空元気でその場を盛り上げようと躍起になっていた。俺はというと、それに参加できるはずもなく、かといって女に話しかける勇気もなく、ただ来た酒をちびちび飲んで料理に手をつけていた。




事態が動いたのは、更に30分ほどたった頃だ。

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