第2話

「なぁ関口せきぐち。お前なら行ってくれるだろ?」


「なんで俺なんだよ。」




標的を俺に変えたらしい三菱が、口を尖らせてうつむいた。どうやらさっきからグーグー鳴ってるのはこいつの腹から出てる音だったらしい。




ちらりと時計を見れば、10分休みも残り半分だった。



2年生の教室は3階にある。購買は1階。それも端っこ。間に合いっこないのは三菱も分かってるだろう。



「お前な、」


「関口?」





時計から視線を外した途端、目に飛び込んできたのは。




あいつの、笑顔。




「ゆず、なにしてるの?」


「ん?」




河合かわいゆず。このクラスでは圧倒的に人気がある女子だ。



いや、もしかしたら校内一かもしれない。


少し猫っ気のある尖った目。長いまつげにプリンとした唇。なにより、胸がでかいのがポイント高い。


成績優秀でピアノも弾ける。噂ではお嬢様。でっかい白い家に大型犬が2頭もいるような家に住んでいるらしい。





「本を読んでるの。見たら分かるでしょ。」


「うわ、酷い言い方。」


「だって未知みちが変なこと言うから。」




同じく男子の人気が高い白金しらかね未知と並べば、大体の男子生徒は振り返るだろう。



まさに完璧女子。俺みたいなゲームオタクの地味男じゃ目を合わすことすらはばかられる。

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