第40話

「そんなんで喜ぶような女じゃねえんだよ。俺の”妻”は。」



あらあら、卒業式がもうすぐなもんだから、そんなこと言っちゃって。



勝ち誇ったようなその言い方に苦笑いが漏れる。



うちの高校の卒業式は、今年は少し遅めで。暦の関係なのか、ぎりぎりホワイトデーより後だ。


奏くんはどうやらここ一発でビシッとゆいかちゃんを感動させて入籍でゴールイン、という完璧な構図を描いているらしい。



「さて、帰るか。女の欲しがってるもんは、本人をリサーチするのが一番だろ?」


「……ベッドの上のそれはリサーチとは違うと思うんですけど。」


ぼそりとそう言えば、物凄い睨みを食らった。



「雑魚はひっこんでろ。」



本当の雑魚の死体(仮)を踏んで、奏が煙草を咥えて俺を嘲笑する。その煙草に火を点けてる鉄もなんとなく俺をバカにしてるような気がするから不思議だよね。



はいはい、どうせ俺は結婚しませんよ。まだ。



「若、これはどうしやすか?」



鉄が、組長の死体(仮)を見下ろしてそう聞く。



「潰せ。」



それに答えた奏の声音には、先ほどの緩さも、同情も、嘲笑すら含まれてはいない。

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