隼人の苦悩

第34話

side 隼人




ここは、とある組。



「あれは?」


「松井組(まつい)ですかい?あそこの若なら知っていやす。」



そしてその組の組長が本来座るべき場所に胡坐をかいて、鉄となにやら真剣な話をしているのはうちの若頭様だ。



「牧瀬(まきせ)が確か、土地を持っていたな。」


「……それはちょっと、規模がでかすぎでは?」



うんうん。この組の組長が奏くんの前で土下座をしているとしても、気にもしない。そりゃそうだ。こんな小事よりきっと、奏には未来に向けた大きな展望ってやつがあるんだろうからね。



「なんでだ。大きければ大きいほど、あいつに相応しいと思わないのか?」


「……若姐さんがそれでよしとするならいいですがね。」


「うん、分かってたし。」



奏がまじめに組の仕事をしてると思ってた俺が馬鹿だった。いやこれはそういうことじゃなくて、一瞬の気の緩みでそう思っちゃっただけだし。



分かってたしね。うん。



「お返しっつうもんはでかいほどいいだろっ?」


「ガハッ、」



組長の趣味なのかダサいデザインのひじ掛けを奏が投げて。それを見事に食らったこの男。



うちの傘下の組の組長なんだけど、少しお痛をやっちゃった馬鹿野郎だ。

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