第32話
箱を開けて出てきたのは、不格好なトリュフチョコレート。
真琴なら、プロ並みの仕上がりだったんだろうけど、初めて作った私ではこれが限界だった。
それを取って半分噛んで口に入れた奏は、ゆっくりとその味を確かめるように口を動かす。
そして、
「ん。」
そう言って、奏の指先が私の口元に。そこにはさっき奏が齧った残りの欠片があった。
恐る恐るそれを口に含めば、チョコレート独特の苦みが広がる。
「おいし。」
「ああ。」
指先をペロリと舐めた奏は、2個目を取る。
それを見る私は、胸の苦しさが取れないまま。
奏と私の今の距離のせいなのか、少しだけ、過去に戻ったせいなのか。
背中の傷がズキリと痛んで、顔を歪めた。
「どっちがいい?」
「え?」
奏が突然、聞いて来るから、訳が分からなくて首を傾げれば。
「分け合うのと、溶かし合うのは?」
「……。」
トリュフを掲げて言うそれの意味はなんとなく分かる、けど。
「どちらをとってもお前を感じれるが……、」
それを口に含んだ奏は私に、キスをした。
奏のキスは、温かい。今離れていたから特にそう感じるのかもしれない。
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