第30話

side ゆいか




「「……。」」



部屋に帰ってきて、ソファーに座らされて、いつもは私をそこで抱きしめる奏は、頬杖をついて見てくるだけ。


家の中の私と奏の密着度はかなりのもので、いつも私のどこかに触れている奏は今、私と距離を取って笑っている。



少しだけ、寂しいと感じるくらいには私は奏がいなくちゃだめになっているらしい。



ジッと私を笑ったまま見つめている奏の目は時折、私が今持っている赤いリボンのついた箱へと移ろう。



その度に思うのは、申し訳なさ。


だって多分、私と奏が出会った時から、奏は毎年楽しみにしてたんじゃないかな。


行事ごとに疎い自分のせいで、大切な奏が寂しい思いをしていたんじゃないかな。そう思ったから。



「くれないのか?」


「……いや、うん、」



だからか、いざあげるとなると手が動かない。『ごめんね。』なのか、『どうぞ。』なのか、『いつもありがとう。』なのか、私が奏に送るべき言葉がなんなのか。分からなくなったから。



「お前からはいつも貰ってばかりだな。」



ふと、奏がそんなことを言った。その言葉に首を傾げるしかない。

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