第27話
「なんか、すげー疲れた。」
そう言いながら、味見用に作ったホールケーキを口に放り込む。
「どうして?」
「ん!」
首を傾げるゆいかにフォークを刺しだして、座れと顎で促す。それに少し面食らったみたいなゆいかはゆるりと表情を緩めると、フォークを受け取って椅子に座った。
「これって、なにげに夢だったりするよね。」
ホールケーキをさ、友達とつつく。ヒッキーだった頃の私じゃ考えられないことだ。
「うん。凄いかも。しかも美味しい。流石真琴。」
「ありがと。」
にっこりと笑うゆいかの口端にクリームが。
「よっと。」
「あっ、」
そこを指ですくって舐めれば、ゆいかは恥ずかしそうにはにかんだ。
可愛い~。なんて悶えないといけないここ。
グゴゴゴゴ……
ゆいかの背後、玄関に出るガラス張りのこの部屋のドアの向こうから、そんな効果音を頭の上に付けた新城組若頭がたばこを吸って立っていた。
「すみませんでした。」
とりあえず机に頭をこすりつけて謝っておく。
「え?……あ、奏?」
ゆいかの緊張感のない甘い声に誘われ、扉が豪快に開く。
ガラスが割れないのが不思議なんですけど。
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