第26話

「どうこれ?」


「上出来だね。」




バレンタインデー前日。うちのキッチンで、手作りチョコを作ることにした。


台所から見える外に、明らかな風貌の奴らがちらほら見えてたけど、そこは気にしない。


気のせいか、明らかにあの漆黒の悪魔もいたけど、気にしないもんね。



隼兄とひろぽんは試食目当て、最終的には本物目当てで家に侵入しようとしていたので、蹴って追い出しておいた。



ゆいかが作ったのはトリュフ。私はビターなガトーショコラと甘い甘いチョコケーキ。



両極端なそれを後で自分で実食予定。



ゆいかのチョコは、失敗しようもないんだけどなかなかの出来栄え。


照れ照れしながらチョコを包むゆいかに何度萌え死ぬところだったか。



「これ、誰にあげるの?」



赤いリボンのそれを指差して聞けば、ゆいかは決心したように真面目な顔を上げた。



面食らう私に。



「だ、だだ、だん、……奏に。」


「……。」


どうやら”旦那”というワードに挑戦しようとしたらしい。



新婚か。いや、新婚なんだけど。



クッ、言えなかったぜ!とばかりに悔しがるゆいかを今すぐ抱きしめたくなった。

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