第19話

「もしかしたらゆいかちゃんがチョコをくれるかも?なんて。」


「あ?」


「だから、下手か。」



明らかに妹からの電話。そしてゆいかちゃんという万能語。そしてチョコ。



そんでもって、バレンタインデーまであと、1週間。



「ゆいかちゃんチョコくれるの?」


自然と口をついて出た言葉は。


「は?な、な、な、わけねぇし!」


「……。」



隼人からの正解と、奏の甘い甘い、笑みを俺にくれた。


瞬時に無表情に戻ったけど奏君、その甘い笑顔、俺には一生ものなんですけど。



「萌える。」


「あ?」



眉間にあり得ないくらいの数の皺を寄せた奏が襲いかかって来そうだからそれはスマイルで誤魔化して、隼人に視線を移した。



『やべぇ、バレる寸前!どうしよう!』とか言ってそうな感じの馬鹿面を前に、マジで嘲笑しか浮かばないんですけど。




組関係なら最高レベルの男でも、いざプライベートが絡むとポンコツすぎるよね。



仕事もプライベートも優秀な俺には理解できないな。



「で?」


「は?」



続きを聞いてあげてるのに、なにその態度。



「奏がどんなチョコが好みかでしょ?本人より俺に聞けば?」


「あ?なんでお前なんかに!」



そう吐き捨てた隼人ににっこりと笑った。

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