第17話

side 弘人




「え?」



真剣な表情で固まった隼人。表情から察するに、かなり厄介な相手らしい。


流石に奏もふざけている場合じゃないって感じで、腕を組んで静観している。



「うん。うん。それで?」


相手は親しい相手のようだ。隼人が敬語じゃないからね。


「それを?うん。そっか。」



ゆっくりと、なんとなく、感じてきた。


「……お兄ちゃんに、グスッ、ほんとに?」



相手は、このバカを究極のバカにしてくれる相手だと。


「奏っ、のっ、好みぃ。っっ、だって!真琴がお兄ちゃんを”頼る”なんてっ、」



真剣な表情はどこに行ったのか。次々とあふれ出る涙は、隼人の頬を伝い続ける。



「なにこれ。」


「ただのバカだ。」



あきれ顔の俺に頷いた奏は、もうやる気がなくなったのか自分の椅子に戻っていく。どうやらかなりイラついたらしく、眉間の皺が半端ないけど。



「うん。うん。大丈夫。気付かれないように聞くから。」


「「……。」」



相手の話を一切聞かなくても、隼人に課せられたミッションは確実に失敗していると断言できます。



「はい。はいー。かしこまりまして。愛してるよ、まこ、………フッ、」



最後まで言わせてもらえなかったくせに、『しょうがないな、こいつ。』みたいな余裕の笑みはどこから浮かぶのか。

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