第16話

「え~、いいじゃ~ん。どうせ要らないでしょ?」


「……。」



それはその通りだが、そこでそれを認めるのも……


「なんか違う。」



そう隼人が言うから、同意の意味でとりあえず手元にあった灰皿を弘人めがけて投げることにした。



「ふあっ!」



しかし灰皿は惜しくも避けられてしまい、弘人のキモイ悲鳴らしきものを聞かされる羽目に。



「惜しい。普通に当たって頭が割れればよかったのに。」



壁に傷を作ったそれを見て、隼人が心底残念そうな声を出した。



「なんだと!妹にもらえない雑魚のくせに!」



涙目の弘人に、隼人は心臓をグサリとやられたようだ。



「クッ、古傷を抉りやがって!」


「は?未来永劫、毎年負う傷の間違いでしょ?」



とりあえず俺が言いたいのは……



「2人共くたばれば問題ないな?」


「「え!?」」



とりあえず2人とも沈めてやろうと思う。それが今の俺のためだ。



「そ、奏くん?なんで立ち上がってるのかな?」


「拳を鳴らすのは指が太くなるからだめっておばあちゃんが言ってたよ?」



ゆっくりと2人に歩み寄り、タバコを吸いこんだ。



「ふーーー、」


「わっ、」


「ゴホッ、」



顔に煙の直撃を受けた2人に拳を繰り出そうとした時。



ピリリ、


「はいもしもし隼人ですぅ~。」


「……。」


「はぁ~。」



邪魔が入った。

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