第13話

「やったこと、ないっけ?」


「なんだその昔すぎて覚えてねえ的な熟練夫婦な感じ。」



真琴の冷たい視線に耐えながらも、少し自分を振り返ってみたけど……



「ないかも。」


「だからかもってなんだよかもって。」



呆れたように腰に手を当てる真琴は、ゆっくりと視線を滑らせて……



「私が教えてあげよう。」



満面の笑みでそう言った。



「遠慮します。」


「即答かよ!」



叫ぶ真琴の声のせいで、クラスの数人が肩をビクリとさせたのが見えた。



「メンドクサイし。」


「ああ~ん?」



ヤンキーみたいに私に脅しをかけても無駄だし。


だって、真琴が教える常識って。



「バレンタインデーといえば!ハートのチョコ!恋する乙女!サプライズ!」


「……はぁ。」



ほら基本、少女趣味な可愛い展開。私は、そういうの苦手。やり方が分からないから。



「やりません。」


「またまたぁ。そう言って結局やるくせに。」



真琴の提案になんて、普段は絶対に乗らない。今回もそうな、



「奏さん喜ぶよ絶対!」


「やる。」


はず、だったのに。



「ぐふふふ、まずは買い物だね。」


「笑い方が恐い。」



結局は、奏が喜ぶのなら、と。ノってしまうのです。

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