バレンタインデーの悲劇

第11話

side ゆいか



「マジの助?」


「うん。マジの助。」




教室で本を読んでいる私が何気なく呟いたその言葉に、真琴は丸々と目を見開いて固まっている。



「あちゃー。」


「……。」



わざとらしく、目を手で覆って主張して見せているけど、うん、それは見なくてもいい。



本から視線を外さない私の視界の端で、なんとかこちらを向かせようと、手を振ってみたり、大きなため息を吐いてみたり。悪戦苦闘のその姿は、流石田島兄妹だと思う。


そんなこと言ったらしばらくふてくされるから言わないけど。



「おーい。」


結局無視に耐え切れず声をかけちゃうところが、隼人にそっくりで。



「フフッ、」



思わず笑ってしまう。


だけどここからは少し……



「ちょっと本を閉じなさい。」


「はい、すいません。」



お兄さんとは、違う。鬼の形相の真琴に命令されて本を閉じると、それは没収されてしまう。


……いい所だったんだけど。



真琴の机の上に乗るそれを名残惜しそうに見ていると、私の視界いっぱいに真琴のつけまつげが。



「人の話を聞きな。」


「すみませんでした。」



その血走った目、どうにかならないかな?苦笑いしか出ない。

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