第10話

「え!?もう帰るの?折角だから俺も見たいんだけど。」


「そのまま見て目が真っ青になってしまえ。」


「さすがに酷くない!?」



わめく隼人を背にして2人、指を絡めて歩き出した。



心なしか、足取りはお互い速い。



「ふふ、」


思わず笑った私に、奏が一層、その目に欲情を濃く映す。




目指す先には、鉄さんが待つ車。さっきまでとは違って、幻想的じゃないけど……



「お疲れ様です。」


「ああ。ゆいか。」


「ん。」



奏に手を引かれて、車に乗り込む直前。



振り返った先には、蒼い洞窟。



その美しさに目を細め、ため息が出るけれど。



「っっ、」




突然引かれてひっくり返った視界を埋め尽くしたのは、漆黒。



「ん、」



とても綺麗だった。ネオンも、奏も、全て。



とても、嬉しかった。



「メリークリスマス。」


「ああ。」




息継ぎで言ったその言葉は、結局もう吐き出されることはない。



私の言葉は、吐息は全て、聖なる夜に奏の唇に吸い込まれて。



ネオンがくれた胸の高鳴りは、夜の激しさを一層煽った。




……END



ーーMerryXmas

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