第5話
繁華街の店に見下ろされた並木道は、その木々が全てこの場の主役となっていた。
真っ青なLEDライトで彩られた道はとても幻想的で、そしてその青々が重なっているせいかどこかつかみ所が無い。
ぼんやりと見える時もあれば、はっきりとその木の息づかいを教えるようにくっきりと木の輪郭を証明している時もあった。
そしてこの場の刺すような寒さは、蒼い木々たちを際立たせこの場の全ての人たちの目を引いていた。
だからだと思う。
こんな人の多い場所で、私と奏が手を繋いで歩いても。
誰1人、気付かない。
「寒いね。」
「ああ。」
私が何か言えば、奏が答える。
「あ、この店知ってる。」
「欲しい物があるのか?」
手を繋いで、寒空の下、微笑む奏に首を横に振って答えて。
「ねぇ、」
「あ?」
青に支配されたこの場を、誰にも気付かれることなく、笑い合って歩いてる。
「綺麗だね。」
「……ああ。」
木々が天空で重なり合い、絡みついている。いつもはそれを、気にも止めない。
だけど青色の光がそれを主張して、木々達が仲良く手を繋いでいることを知らせてくれる。
それに負けまいと、私は奏の手に絡む自分の指先に力を入れて。それに気付いた奏は、頬を緩めて私を抱き寄せる。
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