第4話

「……綺麗。」



連れてこられた場所は、繁華街のど真ん中だった。



そこは、クリスマスイブのせいか人がひしめき合い、前に進むことも困難なほどだった。



まっすぐに進む通りはとても見通しがよく、ひたすら進む並木道はかなり先まで見ることができる。そのせいか、一直線に先を目指す人だかりは、時折信号で区切られてしまう。



そのせいで起こる”渋滞”のお陰で時折立ち止まって周りを眺めることができた。



「気に入ったか?」



そう言った奏は、いつもの漆黒のスーツじゃなく、”普通”の黒いスーツを着ていた。シャツもキチンと?白で、どう見ても高そうだけどスーツもお葬式仕様じゃない。



そして羽織っているのは、真っ黒なコート。結局真っ黒にしてしまっているけれど、奏が完璧に着こなしているせいか裏社会なイメージはまったく感じない。



……ちょっとお水街を牛耳ってそうに見えるけど。



どうやら奏なりに一般人になりきっているらしい。



「ん。」



絡む指に力を入れれば、たばこを口に咥えた奏は私の頭を撫でた。



そんな私たちに気付く人たちなんていない。


なぜなら、並木道を、その先の道を、彩り、導いているのは、真っ青な光たち。

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