第54話

「・・・可愛い。」



着てみて思った。


もこもこ素材のパジャマは着ているだけで温かくなる。


下は短パンになってるけど、生地のおかげか不思議と寒さは感じなかった。



カチャ…、



扉を開けて浴室を出ると、ベッドの上で田島さんがこちらをジッと見ている。



知り合いとも呼べないほどのこの人とラブホテルの一室にいるのは、とても不思議。



私の中では、店長と彼の位置付けはほぼ同列。


だから私は警戒を緩めずにベッドから少し離れたソファーに腰を下ろした。


そんな私の行動をジッと見ている彼に、居心地悪く膝を丸め、恐る恐る口を開いた。



「あの…、」


「ん?」


私の小さな声に返って来た返事は、とても優しくて。


店の従業員の中で話されている彼の人となりとは少し、違って見えた。



「ありがとう。」


「・・・なにがだ。」



感謝の言葉に首を傾げた彼は、足を組んで肘を付いた。



「助けてもらったから。」



彼があれ以上私の身体を穢そうが、もうどうでも良かった。


だけど志保さんが。


志保さんが気にしていたから。



彼女の謝罪の意味は分からないけど、彼女が私の身体を見て顔を歪めたのは理解していた。



志保さんの泣き顔を思い出していた私の耳に届いたのはとても…



「慣れてると言ったくせに礼は言うんだな。」



とても低い、田島さんの声だった。

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