第53話

店長に今、ぶつけるべき感情なんて無かった。


いつも受けていた行為を、またここでもされただけ。



私の心はただ、混沌に満ちていて、


体と心の相反する感情にいつもの様に戸惑っていただけ。



タオルを巻いて、広い脱衣場で体育座りをする。



腕の中に埋めた顔。



広がった暗闇で考えた。



志保さんはなんで謝ってたんだろう?



・・・なんで、泣いていたんだろう?




分からなかった。



男の人は、"2種類'だけ。



【人を愛している人】と【人を愛していない人】


人を愛していない人は、店長が私にしたような行為をきっと、悪いとも思わない。



きっとその人たちは、人を愛したことがないんだろう。


そして同じ、人を愛したことが無くて、そして誰にも愛されていない、私に引き寄せられる。



モノとして扱うには最適な、私に。



それは運命なのかもしれない。



人に愛されるべき人が、傷つかないために、


彼らと私は、出会う。




コンコン・・・、



「・・・はい。」



ノックされたドア。


返事をすれば、返ってきた低い声。



「これを着ろ。」



薄く開けられたドアから放り込まれた袋に、膝立ちのまま近寄った。



「コレ…、」


入っていたのは、服と、下着。



彼が用意してくれたの?



そう思った途端、なんだか胸がくすぐったくなった。

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