第52話

side 茉里



シャワーを浴びて、体にボディーソープを滑らせる。



自分の体に浮かんでいる執着の華は、気持ちが無くとも男が付ける、"存在の証"



この女を征服した。と、まるで犬がマーキングをするように、この嫌悪の塊の華を散らせる。



ガリッ、



私は無表情でただ、それを"消す"



指先から自分の血が滴り落ちて、排水口に血の道を作った。



幸い店長が残した痕は数カ所だけ。



お母さんに【教育】を受けていた頃とは比べ物にならない少なさだった。



浴室を出て体を拭くと、タオルは血の色に穢される。



いつもは服も血がついて大変だったな、なんて笑みを漏らし、視線を移して漸く気がついた事。



「服・・、」




そういえば服が無い。



私の格好は情けなくも、ずり下げられたブラのみで。



それに田島さんが上着をかけてここへ連れてきたから、私の私物はブラだけだった。



「・・・・。」



しばらく考えてみたけど妙案なんて浮かばず。



浴室の湿気のせいかまだ私が消した華からは血が出ていて。



田島さんの上着をもう一度着るわけにも行かず、ただ鏡に映る汚い自分を見ている事しか出来なかった。

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