第44話

「お前さ、」


店長は突然立ち上がり、



「家ないだろ?」


「ッッ、」



私に顔を近付ける。



口角を上げた彼は、


「しかもワケあり。」


私の胸元に手をかけた。



「じゃあさ、」



彼の色のある瞳に、私の体は硬直する。



「どうなっても、追い出せば済むよな。」


「ッッ!」



私の胸を痛いほどの力で掴む彼に、私の中で衝動的な攻撃性が生まれた。



パンッ!「いっ!?」



頬を張った私は、自分の胸元を掴んで、ただ彼を睨む。



「てめえ!」



パンッ!「ッッ、ヒ・・・、」



頬に熱が広がった途端、私の目の前が真っ黒に染まる。




ーーーーお母さん?


『あの頃も、こうやってあげたの。なのにね?アンタと違ってあいつは気持ちよくなさそうで。』


イラつきを見せる母は、悔しそうに爪を噛む。



『さすが私の娘ぇ。ね?気持ちいいでしょう?』



嬉しそうなお母さんは私の顔をのぞき込むなり、嫌そうに顔を顰めた。



『なのになんでかなぁ?私の娘なのに。



・・・・なんで、ゆいかにそっくりなのぉ?』




私は、"代わり"だった。



お母さんが最も憎む相手の、代わり。



私の容姿を見るなり、お母さんは"彼女"にしたことを、私にも科した。


そして”私”、いや、”ゆいか”に、【復讐の完遂】をしようと目論んだ。



だけど私は・・・


『なんか違うなぁ。あいつほど、強くない。



つまんない。』




私は、オチコボレだったんだ。

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