第42話

side 茉里




『密人さんが開店前に店に来るように言っているんだ。』




そう店長から連絡を受けて店に来てみれば、



「まだいらしてないんですか?」


「・・・みたいだな。」



不思議そうな店長だけが店の中央に佇んでいた。




「取り敢えず、一服するか。」


そう言ってきた店長と共に事務所へと歩を進め、2人でコーヒーを飲んだ。



「「・・・・。」」



余り仲がいい方ではない人と2人きりの空間は、とても居心地が悪く、店長も同じように居心地悪そうにコーヒーを飲んでいた。



すると、



「お前、さ、密人さんの女?」



突然そう切り出した店長に目を見開いた。



「この間が初対面ですよ?」



軽い失笑が漏れた私にムッとした様子の店長は、機嫌悪くコーヒーを乱暴に置いた。



「あの人、堅物で有名なんだ。そんな人があんな”ひいき”するか?」



馬鹿にしたような言い草に、私もムッとする。


あんな、というのはあの人が私へのいじめを無くせと言ってくれたことだろうか?


志保さんから聞いた時は驚いたけど、この店を任された人間なら、事態の改善を求めるのは当たり前。



なにより資料を読んだだけでそう”読んだ”彼は凄いと思った。



それがどう繋がったら”ひいき”になるのか。



目の前でイラつきを隠しもしない店長の頭の中を覗いてみたい。

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