第38話
密人は彼女に会いには行かなかった。
会いたいという様子すら無い。
熟考に熟考を重ねるこいつらしいが、あの女の容姿に惹き付けられる輩は少なくはないだろう。
誰かに取られる前に、行動を起こした方がいいんじゃないのか?
そう思って一ヶ月近く経った頃。
何故か俺だけに電話番号を渡していた志保からの電話が鳴る。
「あのぉ、茉里ったら携帯忘れて行っちゃって。心配してるといけないんで家にあるって伝えてくれませんか?」
「あ?」
一緒にいるはずの志保から茉里への伝言を頼まれるのに違和感ありまくりの俺に、志保の声音に動揺が広がる。
「え?今日は密人さんから呼び出されてるって店に行ってますけど……、」
「はぁ?」
もうすぐ夕時だが、開店には少し早い。
そして密人は今事務所で事務作業中だ。
さっき若に甘味を運んだ時、執務室のソファーでパソコンを叩いていたから間違いなかった。
「密人さんはここにいるぞ?」
「はぁ?」
俺の言葉に俺と同じトーンで驚く志保に苦笑いが漏れる。
「でも、店長が……!?」
そこまで言いかけて黙り込んだ志保と同意見なのか、俺の眉間に皺が寄る。
「すぐ店に行け。俺も向かう。」
「っっ……はい!」
電話を切って、少し悩んだ。
密人があの女に興味が無いのなら、俺が単独で処理した方がいいのか?
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