第36話

side 武光




新城組に入って、分かった事。



ガツッ!!


「かっ、勘弁してくだはぃっ、」


「・・・・・。」



白虎総長としての密人は、強く、誇り高く、厳しく、



ガツッ、グチュ…、


「うぐっ、…ぁ、は、」



そして優しい奴だった。



しかし今目の前にいるこいつは、



「俺はあの時なんと言った?」


「ぐっ、ぅ、」



悪魔にしか、見えない。



俺が調べた杉原茉里の経歴は、新城の管轄内にある市民病院で目を覚ました。それだけ。



面会に来ていたらしき男。



監視カメラの全ての死角を使い、行動していて。


足が付かなかった。



分かったのは、保険証に書いてある項目と、彼女名義の多額の金。


そして、彼女の背中の茨の棘跡。



それだけ。



報告を受けた密人は、


「そうか。」


それだけを呟いた。



こいつが何を考えているのか、副長だった時でも分からない時があった。


それでも今よりは、


「お前はクビだ。谷中。」


理解していたように思う。



血飛沫を浴びた密人の頬は、朱が色付く。



繁華街のネオンに彩られた銀髪は、彼の怒りのボルテージを表している様に、逆立っていた。



谷中店長は密人の一言で、絶望を見た。




うろんな彼の瞳はやがて険しさを映し、


「あ”あああああ!」


拳を握って殴りかかった。




反射的に動いた俺の身体。



しかし…、



「ぐぁっ、」



それよりも早く、密人の拳が奴の腹に沈んだ。



涎を垂らし、目を真っ赤にした谷中はやがて、グリンと白目を向いて力無く地にひれ伏す。



膝からゆっくりと落ちた男は不自然な形で気絶していて。



密人はそんな奴に一瞥もくれず、裏口から店内へと足を踏み入れた。

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