第33話

町一番のキャバクラは、店の雰囲気もイキイキとしていて、そのトップに君臨する志保さんはとても綺麗で、”大きな”人だった。




連れてこられた事務所。面接したのは、店長の谷中さん。


第一印象で感じたのは、【嫌悪感】


全身を舐めまわすような視線に、眉を顰めた。



「てんちょー?手出しちゃダメですよ?」



低い声を出した志保さんにも彼は笑顔を返すだけで。



「分かった分かった。お前指名入ってるだろ?面接しておくから早く行け。」


「分かりましたー。」



口を尖らせた彼女が出て行くと、2人きりになった店内。



「・・・・へぇ。」



”違う種類”の笑顔は不快でしかない。



「杉原 茉里です。よろしくお願いします。」



履歴書には、出身校だけを書いていた。他は…、でたらめ。


そんな形だけの履歴書を見ていた彼は、



「君、綺麗だね?」


「ッッ、」



私の黒髪に、指を通す。



ゾワリと体を伝った嫌悪感に、私は彼の手を振り掃った。



それに顔を顰めた谷中さんは、


「んー、店には向かねえな。厨房なら空いてるけど?」


あからさまに、態度を一変させた。



「料理は、作れません。申し訳ありません。」



裕福な家で育った私は、料理の経験など皆無。



頭を下げた私に彼は、イラついた声を上げる。



「志保の紹介だしな。無下にすんのもあれだし。そうだな、トイレ掃除と、皿洗い。雑用やってもらおうか。」



嫌そうにそう言った彼に、私は頭を下げて礼を言うことしかできない。



私によくしてくれている志保さんの顔を潰すわけにはいかない。


そう思ったから。

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