第32話

淡々と過ごした毎日。



病室では変わらぬ風景が日々を重ね、



完治した私は追い出される様に病院を後にした。




手にあるのは、健康保険証と、お金。



病院内のコンビニの袋にそれを入れた私は、同じコンビニで買った服を纏っていた。



この町に来たのは初めてで。



病院の裏の公園のベンチに座る。



このまま死んでしまうのも、悪くない。



笑みを浮かべた私に、



「あれぇ?あなた美人だね?」



間延びした、明るい声が聞こえた。




それが、志保(しほ)さんとの、出会い。




ーーーーー、




「別にさ、今死ななくてもいいじゃん?やりたいことやってから死ねば?」




死にたいと呟いた私に笑顔でそう言った志保さんは、この町一番のキャバクラの№1らしい。



彼女の母親が私が入院していた病院に入院してるから、そのお見舞いの帰りだった彼女に声をかけられた。



私の噂は、病院内で有名だったみたいで。



【茨のオーロラ姫】



そんな大層なあだ名がつけられていることに目を剥いた。




志保さんに手を引かれ、連れてこられたのは彼女のマンション。



高層ビルの35階。



目の前に広がる光景は実家が戸建だった私は見た事が無かった。



「まぁ、住んどけ。」



呆然と景色を眺める私にそれだけを言って、ゲストルームに放りこんだ彼女。



それから彼女は、私に衣食住の全てを提供してくれ、


自分が働いているキャバクラでの仕事も、紹介してくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る