第27話
繁華街へと足を踏み出せば、見送りに慌ててやってくる谷中と店の女たち。
それらを俺は手で制し、
「見送りはいい。”また来る”」
「ッッ、」
この言葉の意味が分かっているのか、谷中が顔を真っ青にして頷いた。
俺はそれに一瞥をくれただけで、フェニーチェへと歩を進める。
先程までは夕焼け雲が残っていたのに、すっかり夜の帳が落ちている繁華街は相変わらず綺麗で、煌びやかで、そして醜い。
しかしなぜだか、そんな繁華街の中心で、気分が高揚している自分がいる。
苦笑を漏らした俺は、もう一本、煙草に火を灯した。
カシャッ…
ジッポをしまった武の嬉しそうな表情を見て、俺はもう一つ苦笑いを溢す。
そんな俺たちを目を細めて見ていた人物は、彼女の存在を思い浮かべて厭らしく口角を上げた。
その男は自分のツンツンに立てられた金髪を指で遊ばせ、機嫌よく俺たちに付き従う。
しかし機嫌の良かったそいつのキツネ目も、
フェニーチェに到着した俺が方々に頭を下げられていることに、険しく歪む。
「チッ、七光りのくせに。」
吐き出された侮蔑の言葉はダンスミュージックにかき消され。
「すぐに蹴落としてやるよ。」
忌々しそうに吐き出された怨嗟は重低音と入り混じる。
「気に入らねえ。」
俺がプラティノの扉の前までくると、彼はその目に曖昧さを戻し、俺の背後に笑顔で張り付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます