第27話

繁華街へと足を踏み出せば、見送りに慌ててやってくる谷中と店の女たち。



それらを俺は手で制し、


「見送りはいい。”また来る”」


「ッッ、」


この言葉の意味が分かっているのか、谷中が顔を真っ青にして頷いた。



俺はそれに一瞥をくれただけで、フェニーチェへと歩を進める。



先程までは夕焼け雲が残っていたのに、すっかり夜の帳が落ちている繁華街は相変わらず綺麗で、煌びやかで、そして醜い。



しかしなぜだか、そんな繁華街の中心で、気分が高揚している自分がいる。


苦笑を漏らした俺は、もう一本、煙草に火を灯した。



カシャッ…



ジッポをしまった武の嬉しそうな表情を見て、俺はもう一つ苦笑いを溢す。



そんな俺たちを目を細めて見ていた人物は、彼女の存在を思い浮かべて厭らしく口角を上げた。


その男は自分のツンツンに立てられた金髪を指で遊ばせ、機嫌よく俺たちに付き従う。



しかし機嫌の良かったそいつのキツネ目も、

フェニーチェに到着した俺が方々に頭を下げられていることに、険しく歪む。



「チッ、七光りのくせに。」



吐き出された侮蔑の言葉はダンスミュージックにかき消され。



「すぐに蹴落としてやるよ。」



忌々しそうに吐き出された怨嗟は重低音と入り混じる。



「気に入らねえ。」



俺がプラティノの扉の前までくると、彼はその目に曖昧さを戻し、俺の背後に笑顔で張り付いた。

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