第25話

「もういい、下がれ。」



「・・・え?」



俺の中で沸き上がる、彼女を抱きしめたいという【欲望】


それに戸惑う俺は、彼女をこの場から離すことによって衝動を抑えようと考えた。



俺が言った言葉に少しだけ戸惑いを含ませた彼女に、鋭い視線を送る。



「下がれ。悪い様にはしない。」



「・・・・失礼致しました。」



俺の態度にムッときたのか、彼女は若干口を尖らせて部屋を出て行ってしまった。



「「「「・・・・。」」」」



しばらく、彼女の出て行った扉を見つめていた俺が口を開かないせいなのか、誰もこの部屋で発言する者などいない。



「あの女……、」



「え?」



訝しげな表情の谷中に、首を小さく横に振った。



「いや、いい。それより、今回の事は若に報告しておく。誇り高き新城の店で、くだらねえ事をするんじゃねえ。」


「すっ、すいません!!」



すねに当たるほど頭を下げる谷中に、俺からの慈悲など皆無だ。



「今後お前も含め、あの女を少しでも”いじめたら”」


「ッッ、」



谷中の強ばる肩に、手を置いた。



「誰ひとり、この店にいられないと思え。」


「ッッ、」



小刻みに首を縦に振り続ける谷中を鼻で笑って、煙草を一本銜えた。



キンッ……、



武がジッポを鳴らし、火を灯す。



上がる紫煙に目を細め、武が開けた扉から廊下へと足を踏み出した。

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