第24話

「お前は色々と問題が多いそうだな。」



俺の言葉に、彼女は悔しそうに唇を噛んで俯く。



その表情で確信を持ったのは、先程まで資料を眺めていて思っていた事に関して。



店の女たちの持ち物の盗難、トイレの備品の破壊、そして彼女の持ち場である洗い場の皿の割れた数。



ドジにしては不自然。


彼女を深くは知らないが、手癖が悪い様には到底思えなかった。



「谷中(やなか)」


「は、はい!」



女を楽しそうに見ていた店長の谷中を呼び、険しい視線を向けた。



「その女の痣、なぜ男だと分かる?」


「へ?」



俺の指摘に間抜け顔になった谷中を前に、俺は立ち上がって杉原茉里へと近付いた。



近付いてみると、思いのほか彼女が小さい事に今更ながら気付く。



身長は恐らく、150前半だろう。



すっぽり収まってしまいそうな華奢な身体に、漂ってくる甘い香り。




抱きしめたい衝動に駆られた。





そんな自分の変化に戸惑いつつも、彼女の口端の痣を指先でなぞる。



ビクリと反応した彼女は怯える身体とは対照的に、俺へと敵意の目を向ける。



気の強い女だと、口角が上がった。




そして俺の指は、少しだけ開いている店配給のシャツの胸元へと下る。



女は怯える自分の身体をゆっくりと滑り落ちる俺の指先をしっかりと、震える手で掴んだ。



非難の目を向けた彼女に口角を上げて、唖然としている店長へと厳しい目を向ける。



「この痣は小さい。相手は”女”だぞ?」


「「ッッ、」」



女と店長が同時に息を呑んだ。



「お前は、店の女たちの何を見ている?」



厳しい俺の声に、店長がバツが悪そうに目を伏せた。

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