第23話

第一印象は、綺麗な黒髪。


後ろへ結わえていたが、艶のあるその髪は、俺の目を惹いた。





そして化粧すら施されていないその切れ長の瞳は、


俺の意識を釘付けにした。





緊張に結ばれたその唇は痛々しくも殴られた青痣が広がり、


俺の心を軋ませた。





腕まくりしているシャツの間から覗く鎖骨と青痣は、


俺の身体を火照らせる。




「杉原、茉里です。」


唇から発せられたその声は、


俺の耳を刺激した。




怯えたその目は少しだけ伏せられていて、


俺を見ようともしない事にイライラが募った。





「顔を上げろ。」



平静ではない俺の口から出た言葉は、心に反して冷静に吐き出されていて、思わず内心苦笑を漏らす。





顔を上げた彼女の目は見開き、そして左右に揺れる。








ノックと共に入って来た、みすぼらしい彼女は、


俺が探していた、女だった。

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