第22話
売上報告を聞く間、ソファーに座る俺の横に武が立ったまま報告を聞いていて、道重は怠そうに壁に凭れていた。
「・・・以上です。」
「そうか、ここは…、」
売上は勿論、起ったトラブル、その解決方法、今月のこの店の全てが載った報告書。
それを読んで質問やアドバイスをしていく。
特にキャバクラは、客との揉め事、店の女同志の揉め事が群を抜いて多い。
1ヶ月だけでも結構な量だった。
その中でも気になったのは、
「この、杉原茉里(すぎはらまり)という従業員、揉め事が多い様だが…、」
俺の質問に顔を険しくさせた店長は、あからさまに不快そうな声を出した。
「うちの№の一人が道で拾ってきた女なんですが、店の女たちと折り合いが悪くて。
見てくれはいいんですが愛想も無いし、店に出すわけにもいかなくて裏方で使ってます。
しょっちゅう傷を作ってくるんで、どうせろくでもない男にやられたんでしょう。」
そう吐き捨てる店長からは不快感と侮蔑、それしか感じられない。
この男は女癖が悪い。
どうせ誘って断られでもしたんだろう。
仕事は出来るが、プライベートではあまり好きにはなれない男だった。
だからか、
「ここへ連れてこい。」
そう言ったのかもしれない。
「え?」
このいけ好かない男を、下の立場ながらも無下に断ったその、”マトモな”女を見てみたくて。
「連れてこい。」
「は、はいっ!」
慌てて出て行った奴の背中を見送ると、武が俺に屈んで呟いた。
「珍しいな、女に会いたいなんて?」
からかいを含んだその声に、口角を上げた。
「俺もあの男がいけすかねえ。同意見の女を見てみたい。ただそれだけだ。」
それだけを吐いて、瞳を閉じた。
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