第20話

初日の仕事がいきなりキャバクラの巡回なんて、ツイてない。



別に女は嫌いじゃない。



しかし…、ふと足を止めて、


青峰瑠衣(あおみねるい)の、縋るような瞳を思い出した。



女は状況に応じて、色々な顔を見せる。



それが俺にはどうしても、信じる対象に見れなかった。



女は恐ろしい生き物だ。



人によって態度を変え、その人物の”背景”によって姿を変える。


服を着替える様に、人格すら変えてしまう。



そんな女たちに、単純な男が勝てるわけがないんだ。



しかし、頭を初め、若や弘人さんを見ていて思う。



女たちも同様、本気で惚れた相手には”弱く”なる。



結局男と女は【対】でいてこそ、成り立っているのだと。



小さく息を吐きだし、何故か親父の背中を思い出した。




親父はいつも一人だった。




確かに抱く女は腐るほどいたけど、


そんな女たちと一緒にいても、


・・・母さんと一緒にいた時も、


親父は常に”独り”だった。




孤独だった親父を、支えて行こうと決めた日、


声を失っていた俺の口からは自然と声が出ていた。





母さんを彩った【朱】





それを見た途端、俺の口からは”音”が抜け落ちた。



出そうと試みても、何かが詰まってしまった様に吐き出されない”音”は、

親父の顔を、悲痛に歪ませた。

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