第14話

「若、これからお願いします。若姐さんも。」


「ああ。」



頭を下げた俺にすぐに返事をした若は、まだ眠そうだった。


若を見ていた俺に突き刺さる視線。



そちらへと目をやれば、弓が猫目を細めて俺を睨んでいた。



「・・・なにか?」


「あんたね、プライベートでその呼び方と敬語使ったらスイーツバイキング、連れて行くから。」


「・・・・分かったよ。」



飾らず、奢らないこの女は、立場が変わっても俺を友人として扱ってくれるらしい。



【恐怖のスイーツバイキング】



俺がそう呼んでいるあの場所。


すんげー羨ましそうにしてる若には悪いが、俺は夏流と弓に付き合わされて朔真と共に行った事がある。



行ってみれば、甘い匂いしかしねえし、女しかいねえ。


煙草も吸えねえし甘いもんを食い過ぎて頭が足りないのか頻繁に声をかけられた。



朔真に声をかけたことで夏流の機嫌は急下降で室温まで下がる始末。



あんな場所には二度と行きたくなかった。



嫌そうな顔をした俺を見てるのに今度は何故か睨みだした若に苦笑いを溢す。



結局弓が頼んだ特大のパフェを嬉しそうに頬ばっていた若は、甘党を隠しきれてねえと思う。



夏流が合流したのはその2時間後。



今度からは個人で行ってもらいたい。



そして翌日。



新城には入社式みたいなのは無いが、今年は新城に入る新入りが俺も含め、多い年だった。



その内の一人が、俺の悩みの種となる事を知らずに。

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