第11話
「でもまさか佐竹さん(さたけ)まで来なくても?」
俺の前で楽しそうに喉を鳴らす佐竹さんに呆れの視線を向けた。
佐竹さんは夏流付きとはいえ、本来こんな買い物に付き合うような地位の人じゃない。
胸元に光る金バッジがそれを表している。
俺の指摘に苦笑いを零した佐竹さんは、
「まぁ、お前になんか買ってやりてえのもあんな。」
いつもは絶対にしない、優しい目で俺を見る。
「・・・ありがとうございます。」
新城に昔からいるこの人たちは、いつも暖かい。
「まぁ、これから若を支えてもらわなくちゃいけねえからな。」
気張れよ?
そう言って俺の肩を軽く叩き、車へと乗り込んでいった。
「・・・密人。佐竹は私のよ?」
「お前は雰囲気をぶち壊すな。」
意味不明な発言に面白くなさそうな顔をしたライオンを伴い、歩いてきた夏流に極寒の視線を送る。
そんなに買う物もない"俺の買い物"に、車3台もいるのか?
やっぱり1人で行けば良かったとため息が漏れた。
車に乗り込めば後部座席では、
「クレープは?」
「俺、甘いの無理。」
あまり甘いものを食べない冬夜の"糖度"を測定中の弓。
不満そうな彼女は、無意識に左手をさすり、
「やっぱ秋呼ぼうかな。甘いもの仲間がいない。」
なんて言って携帯を取り出す。
「寝たばっかなのに起こしたら殺されんぞ。」
鼻を鳴らした冬夜の指摘は最もだった。
若の寝起きは殺人的に悪い。
少し想像してしまった俺をよそに、そんなこと気にも止めていない弓は携帯をタップしながら、
「あ、出発して大丈夫ですー。」
運転手へそう呟く。
「かしこまりやした!」
滑り出した、車。
弓の光速で動く指を見ながら、現地でまた人数が増えそうだと、ため息を漏らした。
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