第6話

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「本日より、こちらでお世話になります。」


「あんま、新鮮味がねえな。」


「すいません。」



荷物を抱えた俺は、唯一出迎えてくれた、側近以外の組員を統率している前橋さん(まえばし)と苦笑いを向けあった。




引退暴走後。俺はその足で本家を出た。


宴会が朝まで続いたが、アドレナリンが放出しているのか寝る事を許さない、自分の身体。


そのまま身の回りの物を纏めていた鞄を一つ持って、本家を後にしたんだ。



頭やゆいかさんたちには、宴会の時に挨拶を済ませていた。



これまで俺を若たち同様、息子のように扱ってくれていた組員たちには、挨拶などいらないと言われていて。


それがあの無骨で、厳つい組員たちのテレだと知っている俺は、言われた通り黙って出て行く事にしていた。



明け方ということもあり、余り人はいない。



鞄を抱え、玄関の引き戸を開けた俺は外に一歩、足を踏み出した。



「もう、行くの?」


「・・・隼人さん。」



玄関の外、壁に寄りかかっていたのは、親父だった。



いつもの笑みを張り付けて。


朝の太陽に親父の銀髪はキラキラと光っていた。



それに目を細めた俺に、親父は一言だけ。



「・・・・死ぬなよ。」



いつもの緩い表情など一切無い、真剣な表情でそれだけを呟いた。



いつもはよくしゃべるくせに。



この人は器用なのにこういうことだけは不器用なんだ。



親父のその言葉に、俺は答えなかった。



代わりに……、



「世話になったな・・・親父。」


「イヤン、パパって呼んで?」


「・・・・キモい。」



いつもの会話をして、お互い笑みを向けあった。



軽く手を上げ、若の事務所へ徒歩で移動する。



そこまで離れていない距離なのにいつもより時間をかけたのは、誰にも内緒だ。

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