第4話
こんな大事な日に、あの男の事など考えたくもなかった。
「・・・・暴走行ってきます。」
暗い気分を振り払う様に、”先代たち”に頭を下げた。
思い思いに送り出す言葉が聞こえ、最後に親父へと視線を向ける。
優しい瞳。
この人はいつも俺にこの目を向けてくれる。
元々いたのかも分からないあの男という父親。
真っ赤に染まった母親。
両親に”捨てられた”俺と血も繋がってないのに、本当の父親として今まで育ててくれた親父は、力強く頷いた。
「行っておいで~?」
「・・・・・はい。」
この人の緩さには、苦笑しか出ねえが。
踵を返し歩き出すと、さっきまでガヤガヤしていた白虎の面々が一点を見つめて惚けている。
その正体など一目瞭然だ。
「もうっ、こんな大事な日に妙なこと思いついて…」
「あの忍んだ感じがエロいんだろうが。
・・・・いいな。きたねえ倉庫とゆいかの絶妙なギャップが。」
「あのね、するのならお休みの日にすればいいでしょう?」
休みの日なら付き合うのか…
俺の頬が赤く染まる。
「あ、密人くん?」
顔を赤くして佇む俺に気付いたゆいかさんは、とても綺麗に微笑んだ。
そんな彼女の隣できつく俺を睨む頭に苦笑いを返して頭を下げる。
「お疲れ様です。本日はいらしていただき、ありがとうございます。」
「んーん、引退おめでとう。ん?これっておめでとうっていうの?」
「これからもっと苦労すんだ。生ぬるい場所からの引退なんておめでてえじゃねえか。」
「・・・。」
口角を上げる頭にゆいかさんが訝しげに首を捻った。
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