第63話

「お二人ともお土産、期待していますね?」


「なんで偽物が土産を欲しがるのよ。」



呆れている小町に、偽小町は意味深に笑みを深めるだけ。どうやら偽小町はもう本物の小町モードになっているようだ。



「うむ。この小生意気な笑顔。お前そのものだな。」



胸を張るミルに、小町は鼻を鳴らす。しかし何も言わない。実は内心、自分そのものだなと思っていたところなのだ。




(私ってこんなに性格悪そうに笑うんだ。)



少々ショックを受ける小町。それを誤魔化すように、小町はミルに偽小町同様、笑って見せた。



「な、なんだ?」


「別に。そろそろ行こうか。」


「あ、ああ。」




とりあえず、これ以上小町を刺激しても良いことはなさそうだとミルはため息を吐く。そして天井に向かって突き立てた人差し指をクルリと回す。



その瞬間、小町とミルの姿が消える。当然消された本人である小町は気付いていない。そして、唯一2人が消えているのを見ている偽小町は、ミルが作ったので驚くはずもなく。



「なにやってんのあんた。」



そして、ミルが気を利かせたせいで、残念なことに小町とミルは相互で見える。そのせいで自分が何をやられたのか気付いていない小町は、ただ妙な動作をしたミルを残念な人を見るような目で見ていた。

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