第59話

「大丈夫だよ!お前は可愛い!本物よりね!」


「……はぁ。」




さすが、小町の複製。笑顔ながらも絶対零度の宿った目で、ミルを見据えるメイド小町。まさに元が元だなと、ミルは苦笑いを零した。



「とにかくこの子がいれば問題ない。」



ミルに肩を叩かれたメイド小町は、その笑顔もそのままに、ジッとミルを見つめる。



その視線はなにやら背後に潜むどす黒いなにかを背負っていて、ミルの背中に悪寒が走った。



この世界の絶対的神である自分が、なぜ複製品を恐れるのか?そう考えてミルは、小町へと視線を移した。




(こいつか。)



自分が創生したはずの人間。自分の歩むべき運命を他の人間によってはく奪され、別の世界へ転生した。しかし、そんな彼女の次の運命も、ミル自らによって変えられ、こうして二度目のやり直しをさせられている。



ミルも申し訳なく思っている。自分の満足感を得るために小町の命をもて遊んだようなものだ。しかし、その結果、小町という人間は思いがけない進化を遂げてしまった。




冷たい目でミルを見る本物の小町。自分をこの世界の神と知り、もはや今は運命共同体であると認識してもなお、彼女の視線は冷たいままだ。



黒い瞳の奥底に潜むその暗い感情は、もはや前の彼女からは想像もつかないほど巨大で、深い。

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