第58話
ゆっくりと、小町人形の口が開く。目を見開き、小首を傾げ、彼女は言い放つのだ。
「スキー。ビターサマスキー。」
「いやいやいや、酷さ通り越して怖い!」
身体をピクピクと痙攣させ、首をギギギギ言わせながら紡がれる愛の言葉は、優雅さからはほど遠く、もはや恐怖しか感じない。
「普段のお前はこんなものだろう?」
「……一体私を何だと思ってるのよ。」
首を傾げるミルに、小町はこれ以上ないほどの冷たい視線を送る。それもそうだろう。こんなポンコツ人形、ミルが傍でサポートしていたとしても、見るまでもなく即バレだ。
小町の絶対零度の視線に、ミルは小さく笑い肩をいさめた。その行動に小町はピクリと眉を上げる。
「冗談だ。ほれ。」
パチン、とミルの指が軽快な音を奏でる。その瞬間、怖いほどに機械化していた小町人形は、人らしく柔らかな笑みを浮かべ、メイド服のスカートの端を持って優雅にお辞儀をしてみせた。
「ごきげんよう、小町様。わたくしになにか悪い点があれば、なんなりとご指摘なさってください。」
「うん、メイド服ー。」
小町の言葉に、小町人形はきょとんとして見せた。少し困惑しているその視線は、自分を創生した神へと向く。
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