第56話
「お前、神をバカにするものじゃないぞ。見ろ。腰を抜かすなよ?」
「え、また?いやいやいや、こわっ、怖いからこれ!」
もはやトラウマになったあれ。小町の目の前でヒトが生成されているのだ。骨組から臓器、血管が生まれ、皮膚のない人間がギョロリと視線を落とす。
その光景は小町がミルに初めて出会った時に体験したもの。人という存在の短時間での創生を、無理矢理に見させられるという奇妙な体験である。
人であろうものは、皮膚が作られようやく、人として認識できるようになった。ゆっくりと生えていく黒髪。無表情のその顔は何度も鏡で見ているものだ。
「私?」
「正解。」
フフンと胸を張るミルが、小町であって小町でないものの肩を抱く。それは、均整の取れた小町の裸体を惜しげもなくさらしていたが、やがて服が精製されていく。
それはもはや、なじみのものとなったそれ。
「だから。なんでメイド服なわけ?」
ミルの少々痛い趣味である、ある意味最高の一品であるメイド服を着た自分が目の前に立っている。小町としては何とも言えない気分だ。
コスプレは趣味ではないが、ちょっと似合ってるな、と内心思ったのは、ミルが調子に乗るから内緒だ。
それを悟られまいと小さく咳をして、小町は自分ではない小町を指さした。
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