生きてくために手に職を

第46話

宮廷の昼下がりの庭では、令嬢たちの笑い声が厳かに響いている。近くを通りかかれば甘い菓子の匂いや紅茶の良い香りに誰もが顔をほころばせるであろう。




ビターを囲む美女たちのお茶会。この国のトップに近い貴族の娘たちは所作、振る舞いともに一流。それも、見た目はもちろん、彼女たちを包むドレスでさえも、二流のものなどありはしない。




洗礼された雰囲気の中、紅茶を嗜む彼女たちは優雅に笑う。それは大口を開けた下品さでも、あざけりの冷笑でもない。




お茶会は貴族の令嬢たちの戦場である。それを知らないのは平民や異世界人くらいなものであろう。彼女たちのテーブルを中心に、戦場を見つめる周りの従者や侍女たちは、そこから流れ出る冷気に当てられ、身を震わせる者もいた。




「それにしても、今日は良い日ですね。だってようやく小町嬢がわたくしのお茶会に参加してくださったんですもの。」




扇子で口元を隠し、目を細めたその女はシュガー・デメリ。悪役令嬢であり、その目的を達成し、ヒロインである小町を見事蹴落としてみせた、悪役中の、悪役である。



小町は前々世、つまり前のこの世界で、シュガーに惨敗したのだから。

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