第44話
小町は知っている。シュガーのビターへの愛の深さも、それに伴って自分へ向けられる憎悪の大きさも。
だからこそ小町は、彼女を近づけるという危険を冒してまで、城に呼び寄せたのである。
ビターという最高の餌をぶら下げ、自分の命という褒美をちらつかせてまで。
「あやつが后妃になれば諦めるのではないか?」
「甘いわね。所詮は神ね。」
「お前、神を何だと思っている?」
眉間に皺を寄せたミルを鼻で笑って、小町は頬杖をついて遠くを見つめた。
「彼女はビターを愛しているの。だからこそ怖い。1ミリでも彼を奪われる可能性があるのなら、慎重な彼女ならすべてを排除したいと考えるのも当たり前のことよ。」
ミルは、それはお前もそうではないのか?と言いたかった。
小町は確かにまだ、ビターに心を寄せているように見える。療養所での楽しい日々のお陰でビターの弟スプレに惹かれている今でも、心の奥底、魂の部分ではいまだにビターを求めている気がしていた。
だからこそ小町は徹底的に、自分が后妃とならない道を進もうとしている。
目指す道は違えど、小町とシュガーは似ているような気がした。ミルとしてもそんなことは認めたくはない。小町とシュガーならば、神の身ながら小町の方を好ましく思っているのは間違いないのだから。だからこそ口をつぐんだのだ。
自分のためならば心清き他者を殺してまで手に入れる。シュガーのその穢れた精神が、神であるミルには理解できなかったのである。
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