第39話

「それにしても。そろそろお茶会行かないと不自然よね。」


「そのようだな。」




ため息交じりの小町の言葉に、ミルは隣に座って頷いてみせた。この世界の貴族の娘にとって、お茶会というのはかなり重要な行事であることは公然の事実である。



そして政治的にもプライベートであっても、お茶会は貴族の娘たちにとって情報を手に入れるための重要手段である。




服の流行から、人の色恋沙汰。そして政治上のことまで、彼女たちの知りうる情報を使って、人付き合いをすることは責務でもあり、彼女たちの生き抜くための知恵でもあった。



当然、お茶会の重要性を分からない貴族の令嬢などいるわけがない、というのが一般的な考え。



しかも同じ后妃候補であるライバルとはいえ、毎度招かれている招待を病気とはいえ無下に断り続けるのは、その令嬢への侮辱だと捉えられかねない。



そして、お茶会に行かない、ということは小町が彼女たちに舐められる、ということもあり得ることだ。




お茶会とは令嬢たちの駆け引きの場。主催、招待客関係なく、その場を支配した令嬢が、すべてを支配できるのだ。参加しないということはすなわち、敵前逃亡と取られても仕方がないのである。




「さすがに全部の情報をミルに頼むのも無理だしね。」



小町の言葉に、ミルはあいまいに笑うだけにとどめた。

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