第37話
すなわち、小町を正妻に。そして体の相性の良いシュガーを側室に迎え、生まれた子を小町の子として育てる。
ビターなら平気でそれくらいしそうであるが、それは小町が最も望んでいない結末であった。
だからこそ小町は、深淵の姫と呼ばれていることは知らないかもしれないが、病気を理由に外界との接触を断ち、こうしてビター自ら会いに来たとしても、必要最低限の対応しかしていない。
徹底的に、拒絶を示しているのではないが、第三者から見ればこれは、今小町にできうる最大限の拒絶であることは、少々人間の感情に鈍いミルでも分かっていることだった。
もしかするとビーンもまた、それに気付いている一人であるのかもしれない。しかしそれを顔に出すほど、ビーンの存在は小町に近くはなかったのだ。
「うざ。」
侍女たちが出て行って、ミルと2人きりになった瞬間、扉を見つめたまま小町はそう吐き捨てた。
「おいおい、油断するまいぞ。侍女にでも聞かれたらそれこそ大事よ。」
笑い交じりにそう言ったミルを見ることなく、小町はソファーに乱暴に腰かける。
そんな小町を見て、ミルはため息を吐いた。
こうしてビターに会うと必ずと言っていいほど小町の心はささくれてしまう。
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